エリート外科医といいなり婚前同居
「うるさくて寝られないんだけど」
文句を言いながらブラウンのロングヘアをうっとうしげにかき上げたのは、内科医の中村由貴(なかむらゆき)だった。
俺や橋本と同世代で、彼女も俺と普通に口をきいてくれる希少な存在。
話を聞かれていたのが彼女でよかったと、俺は少々ホッとした。
「中村。悪い、起こした?」
「ううん、眠ろうとしてたところであなたたちが面白い話始めるから、寝る気なくなった」
悪戯っぽく笑った中村に、俺は苦笑を漏らして尋ねる。
「そんなに面白かった?」
「ええ。そのルックスで、仕事の腕もよくて、本来女なんか選び放題のはずのあなたが、群がる女性たちをいつも冷たくあしらっていたのは、そんな理由があったんだーって」
中村はそう言って皮肉げに笑った。
「……冷たくあしらってるかな」
そんな自覚はないのだが。思い当たるふしがなく首を傾げていると、橋本が指摘する。
「してるだろ。さっきだって、〝暁先生のマンションにお邪魔してみた~い〟とか言う看護師に、〝ごめん。気を許していない相手にプライベートを見せる趣味はない〟って、一刀両断してたじゃん」
ああ……それは、言ったな。でも、当然のことだろう。よく知らない相手を家に入れるなんてあり得ない。
自分のテリトリーに入れても不快じゃないのは、千波だけだ。
……まぁ、別の意味で心は乱されるが。