エリート外科医といいなり婚前同居

「なんだ……寝てるだけか……」

安堵感で、一気に脱力する。少し遅れてキッチンを覗きに来た橋本も、ホッとしたように息をついて言った。

「あーびっくりした。俺のせいで急性アルコール中毒起こしてたらどうしようと思った」

「……こうなったのは十分お前のせいだけど」

「そう睨むなって。反省してるよ。お前がどれだけ彼女を溺愛してんのかわかったし、俺はもう帰るからさ。彼女のこと、優しく介抱してやれよ?」

「言われなくてもそうするよ」

俺の言葉に肩をすくめた橋本は、荷物をまとめて静かに出て行った。

俺は千波の手からミトンを外し、上半身を抱き起こすとエプロンのリボンを解いて外した。

これで少しは楽になったか……? とにかく、ベッドに寝かせてやらないと。

彼女の背中とひざの裏に手を添え、抱きかかえながら立ち上がる。

「軽っ……」

千波の体重があまりに軽くて、思わず声に出してしまった。

軽くて、小さくて、細くて、柔らかくて……俺とは全然違う、か弱い体。そんなことを噛みしめると、愛しさで胸が潰れそうな痛みを覚える。

同時に、無防備に俺の腕に身を委ねている彼女に、若干の苛立ちも湧き上がった。



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