雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

おいしい、はっきり言って美味しすぎる条件だ。
毎月それだけ貰えるなら、弟や妹たちの好きなものを買ってあげられる。だけど――――。
陽和の脳裏に父の笑顔が浮かぶ。
子供の頃、一緒にパンを作っていた時。

~~回想

父「いいか、陽和。世の中、お金が全てじゃないんだ。欲に流され、甘い話に飛びついてはいけないよ」

~~

大好きだったお父さん。
そうよね、こんな良い話には裏があるに決まってる。

それに――。
あんな失礼極まりない社長の秘書なんて絶対に嫌よ。

陽和「この話は聞かなかったことにします」
榊「花里さん!」
陽和「お断りします」


――数日後。

〇ハローワーク(昼)

陽和の向かいには、やる気のなさそうな職員が座っている。

職員「正社員で、給料は最低でも18万ですか?ちょっと厳しいですよね~」
陽和「そこを何とか!」
職員「でもあなたの場合、高卒で職歴もないし資格もないですしね」
陽和「……つまり、このスペックで正社員雇用、給料28万+能力給はおかしいと?」
職種「舐めてんですか、あなた。夜の仕事ならともかく、そんなのありえないですよ」

そうだよねぇ。
やっぱりあの話はおかしいよね、断って正解だ。
でも、就職どうしよう?
いっそ、夜の仕事をしようかな。
お水だって一生懸命働くなら、真っ当な仕事だよね。

ハローワークからの帰り道、そんなことを考えながら歩いていると。
正面から半泣きの陸と和奏が走って来た。

陸「お姉ちゃん!」
陽和「どうしたの?血相変えて」
和奏「お母さんが、病院に運ばれた!」
陽和「え!?」
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