雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
2章おまけ
◯AMAMIYA FOODS 本社 秘書室(昼)
大量の紙袋を抱えた米山が戻って来る。
どうやら1人のようだ。
その様子を自室の部屋から見ていた雨宮が、米山を内線で呼ぶ。
雨宮「花里はどうした?」
米山「急に用事が出来たみたいで、どこかへ行きました」
雨宮「何?」
米山「入社早々、大した子ですね。もしかしたら、このまま戻ってこないかも」
雨宮「そんな子じゃないと思うが」
米山「そう言い切れます? 社長は前からあの子を知っているんですか?」
雨宮「いや、知ったのはごく最近だ」
米山「それだったら、分かりませんよね? 今時の子は気に入らないことがあれば、すぐに辞めちゃうんですよ。先輩にこーんな荷物を持たせても気にも留めないんだから。お陰でビィ〇ンが買えなかったわ!」
怒りをヒートアップさせる米山に、雨宮は堪らず餌を与える。
雨宮「ヨ、ヨネさん、ビィ〇ンはまた今度買ってあげるから」
米山「絶対ですよ、約束しましたからね」
榊が部屋に入ってくる。
榊「花里さんがどうかしましたか?」
米山「どうしたもこうしたも、」
雨宮「ヨネさん、もう下がっていい」
米山「失礼します」
米山が出て行くのを見届けてから、雨宮は切り出す。
雨宮「どう思う?」
榊「もう少し様子を見たらどうでしょう?」
雨宮「そうだが、」
榊「坊ちゃ……社長、思い出してください。幼稚園の時、社長の鞄が無くなって七海さんが疑われた事があったじゃないですか」
雨宮「覚えてないぞ、そんな事」
榊「状況的に七海さんしか盗んだ人は居ないという中、社長だけは彼女を信じました。私はあの時の感動を今でも忘れていません」
雨宮「いや、もう永久に忘れてくれ」
榊「花里さんのことも、信じてあげてください」
雨宮「あの時とは、全く状況が違うが」
榊「信じる気持ちに違いなど!」
薄毛を振り乱して力説する榊。
雨宮「わかった、わかった。もう少し待って、帰って来ないようなら電話してみるから、それでいいな?」
榊「それでこそ社長です(超笑顔)」