雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません


その頃、匠は総合病院の入り口にいた。
肩先まで伸びた髪にピンクのインナーカラーを入れ、ほんのりメイクもしている。
服装は黒を基本とし、だぼっとした上着とタイトなジーンズ、厚底ブーツを合わせていることが多い。服装だけを見ると男の子だと思われるけど、中性的な顔と柔らかい話し方、男性の割に高い声などから、ボーイッシュな女の子だと間違われることも。

いつものように母の着替えと某弾少年団が乗っている雑誌を持って病院にやってきた匠は、エントランスを闊歩する雨宮の姿を見つけ思わず声を掛けた。

匠「あのっ」
雨宮「何か?」
匠「僕、あの、花里陽和の弟です」
雨宮「あぁ、ひよこの」
匠「ひよこ……?(まぁいいか)もしかして母のお見舞いに来てくださったんですか?」
雨宮「いや、仕事で来ただけだが」

雨宮の後ろには、大西と米山もいる。
問題があったというまるびし商会は、AMAMIYA FOODSの子会社で、この病院の療養食を製造している会社だ。

匠「そうですか、失礼しました」
雨宮「いや、お母さんのところに顔を出した方がいいか?」
匠「いえいえ、そんな!滅相も無いです」

顔圧すげぇええええ。
匠は雨宮の顔圧の強さに驚きながらも、こんなイケメンが病室に来たら母が大はしゃぎするだろうなと内心苦笑する。
――と、不意に米山が「あっ」と声をあげた。

米山「あなたもしかして、匠くん?」
匠「えっ」
米山「やっぱりそうよね、今SNSで話題になってる子ですよ」
大西「あぁ、聞いたことあります。確かジェンダーレスの」
米山「大西くんが知ってるとは意外ね」
大西「妻が彼のファンなんです」
米山「人気なのねぇ。サインもらってもいい?」
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