雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

陽和「おはようございます、仕事をしてらしたのですか?」
雨宮「あぁ、もうすぐ終わるところだ」
陽和「珈琲入れますね」
雨宮「いや、珈琲は要らない。昨日から飲み過ぎで胃が荒れそうだ」

確かに、空になった缶珈琲がテーブルの上や床にいくつか転がっている。
寝ないで仕事をしていたのかな?
昨日のトラブルって、大変なものだったった……?
陽和は音をたてないように、キッチンに向かう。

陽和「よかったら、どうぞ」

再び雨宮のところへ行きマグカップを差し出した。
雨宮は相当に疲れたのか、パソコンの画面を見ながら眉間を揉んでいる。

雨宮「これは?」
陽和「はちみつティーです。ホッとしますよ」
雨宮「へぇ、ひよこのお手製か?」
陽和「そうです、と言いたいところですけど、市販のハーブティにはちみつを混ぜただけです」
雨宮「そうか……でも、うまいな」

雨宮がふぅーと長い息を吐く。
気怠そうにしているだけなのに色気が増して見えるのは、なぜだろう。

陽和「さ!朝ごはんを作りますね。その間に社長はシャワーを浴びてください」
雨宮「そうだな……あ、そうだ、ひよこ」
陽和「何でしょう?」
雨宮「今日は大役があるぞ」
陽和「たい、やく?」


〇某レンタルビデオ屋(昼)

ここは匠がバイトをしているレンタルビデオ屋。
お店の名前が書かれたデニム地のエプロンをつけた匠がレジを担当している。

匠「レンタル期間1週間です。ありがとうございました」

接客が終わったところで、背後から同僚スタッフ(以下、加藤)に声を掛けられる。

加藤「お疲れ、先に昼休憩行っていいってさ」
匠「うん、ありがとう」

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