雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
◯ AMAMIYA FOODS 面接会場(朝)
ガラス張りの立派な自社ビルの前。
ひとり気合いを入れる陽和。
案内に従い、エレベーターに乗り込む。
陽和 (何とか間に合った〜)
転んで破れたパンストはコンビニで買い替え、絆創膏も貼っている。
面接は5人1組で行う模様、名前を呼ばれて部屋の中に入る。
面接官「どうぞ、お掛けください」
陽和「はい!」
面接官「それでは、まず初めに自己紹介を……」
順番に面接が進む中、部屋のドアが開く。
面接官 「本日は特別に社長が同席します」
その一言で緊張感が増す面接会場の中。
席に着いた男性を見て、陽和は目を剥く。
陽和(あの人……!)
”社長”と紹介されたのは、さっき怒鳴りつけた男性だった。
〇カフェレストラン「SUNNY」 (夜)
ログハウス風のお洒落でカフェレストラン。
テーブル席が4つとカウンター席が6つあるだけのこじんまりとした店は隠れ家的な雰囲気があるせいか、常連客らしき人しかいない。
その中で、エプロン姿の陽和がカウンターに座り項垂れている。
カウンターの中には、30代前半くらいの優しそうな顔をした男性がグラスを拭いている。(以下、マスター)
マスター「ははっ、それは災難だったね」
陽和「笑いごとじゃないよ~、最終面接までこぎつけた会社だったのに」
マスター「結果はいつくるの?」
陽和「知らない、どうせ落ちたに決まってる」