雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

榊「欲しいですよ。社長が早く結婚してくれたら安心して死ねます」
雨宮「じゃぁ、あと20年は死ねないな」
榊「いっそ私と結婚しますか」
雨宮「勘弁してくれ!」

なんだかんだ仲良しだよなぁ。
陽和は2人の掛け合いを見て笑う。

〇某高級ホテル、パーティー会場(夜)

”高級”とだけあって、会場はどこもかしこも豪華で煌びやかな景色が広がっている。
エントランスで車をおり、雨宮のエスコートで会場に足を踏み入れた陽和は、すでに圧倒された様子で辺りを見ている。
すると、周りにいる女性たちの視線が雨宮に注がれていることに気が付いた。
それもそのはず……。
100年以上も続く老舗食品会社の社長にして、映画俳優のような完璧な容姿。
上流階級の中に紛れても引けをとらない、むしろその中でもひと際目立って輝いているオーラと自信に満ち溢れた雰囲気を持ち合わせ、優雅な笑顔を惜しみなく振りまいている。
普段のダメダメっぷりを見ているから忘れていたけど、社長ってすごい人なんだ……!

会場を歩いていると、向こう側からやってきた男性に声を掛けられた。

男性「雨宮社長、ご無沙汰しています」
雨宮「あぁ、久しぶりだな。いつ以来かな?」
男性「事務所の忘年会以来ですよ。その節はお世話になりました」
雨宮「いやいや、活躍は聞いてるよ。映画の主役が決まったとか」
男性「社長のお陰です」

雨宮と挨拶を交わした男性は、陽和にも笑顔を向け「では」と去っていく。
その後ろ姿を見ていた陽和は、思わず「随分イケメンでしたねぇ」と呟いた。

雨宮「今の人を知らないのか?」
陽和「えぇ、知らないですけど、」
雨宮「最近人気の俳優だぞ、毎日のようにテレビにも出てる」
陽和「え!そうなんですか!どうりでイケメンなわけだ」
雨宮「……ひよこは、そういうのに疎いのか?」
陽和「そういうのとは?」
雨宮「芸能関係とか」
陽和「あー、実はそうなんです。テレビは見る暇がないですし、SNSも全然やってないので流行りについていけなくて」


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