雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
なるほど、そういうわけか……と、雨宮は独り言ちる。
首を傾げる陽和に小さく首を降り、彼女の腰に手を当てた。
雨宮「シャンパンでも飲みに行くか? 立食だが料理もある」
陽和「わー美味しそう!!」
雨宮「(ふっと笑って)好きなだけ食べていいよ」
陽和「いいんですか!?」
満面の笑みを浮かべる陽和を、雨宮は優しい顔で見つめる。
しかし、料理を口に入れた陽和は顔をしかめた。
雨宮「どうした?」
陽和「いや、これってここのホテルで作ってる料理ですよね?」
雨宮「あぁ、うちの商品も提供している」
陽和「ですよね……」
雨宮「何が言いたい?」
陽和「私、AMAMIYAFOODSの就職試験を受ける前の社の商品を全部食べて研究したんですけど、なんか味が違うような……」
雨宮「味が違う?」
雨宮は首を傾げ、陽和が持っていたフォークを取り、彼女の食べかけの料理を口に入れた。
陽和「どうですか?」
雨宮「うーん、言われてみれば微かに違うような、違わないような……」
――――と、その時。
陽和と雨宮の背後から近づいてきた人物が、雨宮に声を掛けた。
見ると40代後半くらいの、少し気の強そうな女性(以下、楠田)だ。
楠田「どうもぉ、お久しぶりですぅ」
雨宮「あぁ、楠田社長。ご無沙汰しています」
楠田「今日はまた、えらい可愛らしいお嬢さんを連れていますなぁ」
陽和「はじめまして、秘書の花里です」
楠田「あら、まぁ。秘書さんかいな。勿体ない」
雨宮「おっと、それはスカウトでもするつもりですか?」
楠田「いやいや、残念ながら。うちはBOY専門の事務所やさかい堪忍なぁ。あ、そうや、紹介しとくわ、この前からうちが口説いてる子やねん、なかなかOKくれへんのやけど今日はこうして来てくれた……あれ!?」
楠田が振り返った先、誰もおらず彼女は辺りを見渡す。
すると、少し離れたところに紹介したい子がいたようで、楠田は彼を呼びに行った。