雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
楠田「お待たせしました、この子が我が社イチオシの……」
陽和「えっ!? た、匠?」
そこにいたのは匠で、彼は驚いた顔のまま固まっている。
陽和も同じく驚いた顔をしており、雨宮だけ渋い顔をしている。
楠田「ん、知り合いか?」
陽和「我が社イチオシって……スカウト……これは一体どういうこと?」
楠田「いや、だからうちの事務所に入って貰おうと思って半年前から声かけてたんだけど、なかなか返事をくれんでなぁ、今日やっと返事を、」
陽和「半年!? 聞いてないよ!」
楠田「いや、あの、2人はどういう……」
陽和「返事しなさいよ、匠!あんたお姉ちゃんに黙って、あっ、ちょっと!」
陽和の言葉を最後まで聞かず、匠は走って会場を出ていく。
すかさず陽和は追いかけようとしたけど、雨宮がそれを止めた。
雨宮「今、ひよこが行っても、混乱するだけだ」
陽和「でも!」
楠田「もしかして、匠くんのお姉さんかいな?」
陽和「そうです! 芸能事務所だなんて、弟はまだ未成年なんです。家族に話もしないでそんな勝手なこと!」
楠田「未成年ゆうても、もうすぐ20歳や。自分のことは自分で決める歳やで」
陽和「そうだけど……!とにかく匠と話してきます」
再び、匠の元に行こうとした陽和の腕を雨宮が掴む。
雨宮「冷静になるんだ、ひよこ」
陽和「無理ですよ! 大事な弟のことなのに、冷静になんてなれません」
雨宮「だったら、僕が行く」
陽和「えっ」
雨宮「話は僕が聞いてくるから、ひよこはこの会場にある料理を全部食べて、どれに違和感があったか書きだしておけ。いいか、これは社長命令だぞ」
陽和「ええええええ」