雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
陽和は今朝の出来事を引きずっていた。
頭から何度追い払おうとしても、雨宮とアンジュのキスシーンが再現される。
何もあんなところでキスしなくてもよくない?
だいたい何なの、元カノじゃないの? 別れたのにどうして一緒にいるの?
朝に部屋から出てきたということは、泊まったってこと……?
別に、社長が誰と付き合おうと、誰とキスしようと私には関係ないけど。
朝っぱらからあんなの見せられたら、気分が悪くなって当然でしょ。
彼女が来ているなら、そう連絡してくれてもいいのに。
というか―――ちょっかいって何よ、ちょっかいって!
陽和「あぁ胸くそ悪い!」
愛花「ちょ……と、花里さん? そんな下品な言葉を使っちゃだめよ」
立花「そうだよ、どうしちゃったわけ」
ふと、店内にあったテレビに目をやると、アンジュのCMが流れている。
立花が「いい女だぁ」と、呟く。
陽和「は、どこが?」
立花「え、どこって……え?」
愛花「あら、花里さん、気が合うわね。私もこの女の良さが分からないわ」
陽和「意見が合うようで光栄です」
立花「ちょっと2人とも顔が怖いけど、どうしたの? もしかして生〇……」
なにやら余計なことを言いそうだった立花の口に、陽和はフォークで刺した肉のかたまりを突っ込む。
陽和「デリカシーのない男性は嫌いですけど、恥を知らない女性はもっと嫌いです」
愛花「その通りね、あなたなかなか言うわね」
陽和「愛花さんほどじゃないですよ」
愛花「あらそう? ふふふ」
ゴゴゴ、と炎が煮えたぎるような音をたてて、不気味な笑顔を浮かべる陽和と愛花。一方、立花はそんな2人を涙目で見つめていた。