雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
〇カフェレストラン「SUNNY」(夜)

かつてのバイト先、SUNNYでご飯を食べている陽和。
同じカウンター席には、なぜかいつもいる常連客の中井。カウンターの中にはマスターと、最近ここでバイトを始めた和奏がそれぞれ仕事をしている。

中井「へぇ、食品アドバイザーか。すごいね」
陽和「でも、まだ全然慣れなくて」
中井「1つ1つ覚えていけばいいんじゃない? 傍で社長がフォローしてくれるんだろう」
陽和「そうだけど……」

実際、雨宮はフォローしてくれるが、基本的には放任主義で。
指示を仰ごうとしても「ひよこはどう思う?」「思ったようにやってみろ」の2つしか言わない。
今日の打ち合わせだって、直前で行けなくなったとか言うし。
万が一愛花から攻撃されても大丈夫なように立花を付けてくれたけど、陽和としては雨宮に同行して欲しかったのだ。
そりゃ、雨宮社長は忙しい人だし、一社員である自分に社長自ら仕事を教えてくれるなんて思ってないけど、少しくらいは気にかけてくれてもいいのに。

そんなことを考えながら、ドリンクを飲む。
思いの外おいしくて、顔をあげた瞬間、何やらマスターに頼み込んでいる和奏に気づいた。

和奏「ね、マスターお願い!!」
マスター「うーん、聞いてあげたいところだけど、うちもそんなに余裕ないからなぁ」
和奏「ちょっとだけでいいの!ちょっとだけバイト代上げてくれたら助かる」
陽和「助かるって、どういうこと?」

話に入り込んだ陽和に、和奏は「しまった」という顔をする。

和奏「あ、あのね。欲しい時計があって。もうちょっとで買えそうだから……」
陽和「だったら、地道にお金を貯めなさい」
和奏「でもぉ、もうすぐ誕生日だから」
陽和「誕生日? 誰の?」
和奏「……彼氏」
陽和「彼氏ぃ!?」
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