雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません
和奏「ね、いいでしょ? それか、お姉ちゃんお金貸して」
陽和「ちなみにいくらの時計を買うつもり?」
和奏「えへへ、15万」
陽和「じゅうごまん!? バカじゃないの?」
和奏「それくらい普通だよぉ」
陽和「ねぇ、聞いたことなかったけど。彼氏って歳はいくつなの?」
和奏「5歳上だから、21歳!」
陽和「……何してる人」
和奏「バンドマン!超、カッコいいんだよ~!でも、まだデビューしてないからスタジオ代とかライブの経費とかお金がかかるんだよ。それでガソリンスタンドでバイトしてるの。あ、だけど!いつかは武道館でライブができるって言われてるくらい人気があるんだよ。だから、苦労してる今は和奏が支えてあげたいというか、支えるべきでしょ!」
陽和「和奏あんたねぇ……」
絶対に騙されてるよ!!!
喉元まで出てきたものの、目をキラキラさせる和奏には言えず溜息だけが零れる。
陽和「とにかく、お金は貸せない。マスターも時給を上げる必要ないから気にしないで。ごめんね、変なお願いしちゃって」
マスター「いや……50円くらいならあげても」
陽和「だめ!」
和奏「どうして? お姉ちゃんのケチ!」
陽和「和奏、よく考えなよ。5歳も年下の彼女に15万もする時計をもらって彼氏が喜ぶと思う? もし喜ぶなら、その彼氏はおかしいよ」
和奏「そんなことないもん」
陽和「そんなことある」
和奏「何よ!今まで彼氏ができたことないお姉ちゃんに何が分かるの!?マスターが良いって言ってるんだから、余計な事言わないでよ!」
不貞腐れて、店の奥へと行ってしまう和奏。
あちゃぁーと頭を抱えるマスター、肩をすくめる中井。
陽和はマスターに申し訳なく思う気持ちと、和奏を心配する気持ちでいっぱいになっている。
そんな時に、雨宮から電話がかかってきた。