雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

他愛ない話をしながら家のすぐそばまで帰ってきたところ、スーツ姿のおじさんがウロウロしている。
かなり場違いな雰囲気で、怪しい。
ゆいゆいを抱っこし警戒していると、

榊「花里さん!お待ちしていました」
陽和「ん? あなたは」
榊「先日は失礼しました、AMAMIYA FOODSの榊と申します」
陽和「あっ」

そうか、あの社長と一緒にいたということは、この人もAMAMIYA FOODSの人間なのね。

榊「先日の事故のお詫びを、と思いまして」
陽和「その件はもういいですから」
榊「それと、採用の知らせにやってきました」
陽和「さい、よう? 私が?」
榊「はい、我が社の面接を受けられましたよね? 何度か電話しましたが繋がらなかったもので、こうして知らせに来た次第でございます」
陽和「あ、それは……そのスマホが壊れてて。でも、どうして、わざわざあなたが?」
榊「折り入ってお願いがあるのです」
陽和「お願い?」

榊はニッコリと微笑みながら、「ここではちょっと」と言う。
ゆいゆいを家に帰した陽和は、榊を連れて近くの公園へ向かった。

陽和「すみません、家族が多いもので家では落ち着いて話せないんですよ」
榊「いえいえ、結構ですよ。もしよろしければ近くのカフェにでも」
陽和「すぐに戻らないといけないので」
榊「では、単刀直入に話します」
陽和「はい……」
榊「花里さん、あなたには我が社長の専属の秘書になってもらいたい」
陽和「専属の秘書?」


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