今更処女だなんて言えない
「わざと?
小学校の頃って、
水溜まりとか
わざと雨に濡れたりとかしたよね
傘は貸さなくても大丈夫みたいだけど、
て、あ、ダジャレ言うつもりはなかった。」
「え·····」
俯いていた私の足元は水溜まりで
さらにはどうやら
傘をさすことを忘れていたみたいだ。
その低い声は
今私が見ている水溜まりに映った影の人だろう。
「忘れちゃっただけ」
傘貸さなくてもってダジャレは完全にスルーして
私は俯いたまま一言だけ返す。
でも覚えている、
私はこの声を
覚えているんだ。