暗鬱な君に花束を



「…うそつき」


「なにが」


とぼけたってムダだよ。私の目はごまかせないからね。


緩んだ口元、隠し切れてない。私のドキドキを返して、眺。


「…ニヤニヤしてる。余裕まみれじゃん」


「…それは、」


眺は少しだけ口ごもったけど、


「やっぱナイショ」


そう言ったきり、前を向いて真面目な顔つきになった。


でも私は、もう式に集中なんかできなかった。噓だってわかっても、顔にこもった熱は逃げてくれなくて。


…ズルい。言いたいことだけ言って、あとは「自分は知りません」って言うみたいに涼しい顔してるなんて。


余裕ないのは、私ばっかり。


…悔しい。


『──僕はこの高校生活をよりよいものにするために、友人やクラスメイトたちと協力して生活していきたいです。新入生代表、関根雨月』


──パチパチパチパチ…


新入生代表あいさつが終わった、ということは、入学式は半分以上終わったということ。


もう少し頑張れば、また礼奈ちゃんと話せる…!


そう思った私は、ちょっとだけ、「残りもがんばろう」と思えたのだった。


< 19 / 68 >

この作品をシェア

pagetop