暗鬱な君に花束を



礼奈ちゃんがうっとりする。こういうところ、やっぱり女の子だ。


「お父さんとお母さんラブラブでね、お父さんがプロポーズしたとき、999本のバラの花束をあげたんだって。“何度生まれ変わっても、あなたを愛する”って意味」


「そんなにたくさん…」


「と言っても、その花は造花なんだけどね。お母さんももともと、そんなにバラが好きだったわけじゃないし、生花だと枯れちゃうからって、一本一本お父さんの手造りだったみたい」


昔、お母さんに何度も何度も聞かされた。その度に、うっとり話すお母さんの横でお父さんが照れてたっけ。


懐かしいなぁ。


「…すごすぎない?」


「うん、すごいなって思う。だから二人は、私の憧れ」


「…憧れ、なんだ?」


「……眺?どうしたの本当に?さっきから変だよ?」


表情は暗いし、声もちょっと低い。もしかして、こういう話題は嫌いなのかな。


だとしたら、私はずっと眺を苦しめてたことになる。


そう考えただけで、申し訳なさに押しつぶされそうでツラい。でも今ツラいのは、きっと眺。


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