暗鬱な君に花束を



「ご、ごめんなさい…聞き間違いかと思って」


「聞き間違いじゃないよ。俺は三条さんに声かけたの」


…な、なんでまた、爽やか王子の椎名くんが。


声かけられて嬉しいけど、なんだか不思議だなって気持ちが少し勝ってる。


「三条さん、俺と友達にならな…」


「三条ちゃん!」


何か言いかけた椎名くんの言葉を遮って、誰かが私の名前を呼んだ。


「渋谷…俺が今三条さんと喋ってんだけど。遮んなよ」


「嫌だ」


心底嫌そうな顔をする椎名くんと、しれっと言い放つ、可愛らしい女の子。私の後ろの席の子だと思う。


“渋谷”と呼ばれたその子は、明るめの髪色でフワフワのミディアムヘアで、ぱっと見はギャルっぽく見えるけど、薄めのメイクでも可愛い子だった。


…きっとナチュラル美少女。うらやましい。


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