拾い物は危険な新婚生活のはじまりでした
披露目当日

会場のホテルはピリピリとした厳戒態勢の中にあった

今日ここに東の極道が一堂に会する

東のトップである桐生組の若頭の婚姻の披露目だという。

今まで、浮いた噂の無かった若頭、その見た目、手腕から誰もが欲しいと

思っていたが、数ある縁談も受けることがなかった。

一時期、傘下の相楽組のお嬢が若頭に色目を使って懐柔しようとしたようだが

無残にも本人はどこかの地下に売られたようだ。今のところ、他に相手がいる

とは聞いていない。もしかしたら、今日選ぶのか?相手はどこの誰かと

様々な思いを皆が一様に巡らしていた。

集まった多くの組長等も自分の娘をという気持ちで連れてきているのは

一目瞭然だった。

会場は異様な興奮に包まれていた。

そこに、扉が開き東の御大 桐生龍之介、桐生組組長、姐が続く。

その後を、西の御大 成瀬虎太郎、成瀬組組長、姐、若頭が入ってきた。

「おい、何故西の成瀬組がいるんだ」「西の御大もいるぞ」

辺りはいるはずのない、成瀬の面々に驚きを隠せない。

一同が席につくと、再び扉が開いた。

羽織袴姿の若頭の精悍な顔立ちに女たちはうっとりと瞳を潤ませ、男たちは

息をのむ。その後ろに、真紅の振袖をきた儚げな印象の美しい女。

美男美女とはこういう二人をいうのかと思うほど、似合っている。

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