拾い物は危険な新婚生活のはじまりでした
分娩室の横にある部屋に通される。そこで横になっていると、今までが嘘の

ような痛みがお腹に走った。「イ、イタイ・・・」

少しすると痛みが引くがまた直ぐに痛みが襲う。

なかなか終わりの見えない痛みが続く、このまま死んでしまうのではないか

とすら思えてくる。

奏さんは、側で私の手を握り腰を擦ったり、汗を拭いたりしてくれるが

尋常ではない程の痛み・・・。

「まだ、いきんじゃダメよ」看護士さんはそう言うがどうしていいか分からない

そうこうしていると、「分娩室に行きますよ」声が掛かった。

歩いて隣の分娩室へ

分娩台にのり、いよいよ出産!

「はい、いきんで!」「ンンンン・・」

有り得ない程の汗が噴き出すのが分かる、隣に立つ奏さんが汗を拭く

「はい、もう一回」「ンンンンン・・・ハァハァ・・・」

痛みが襲うがもうこの時には、痛みよりもこの子を無事に産まなければという

思いしかなくなっていた。

「もう少しよ、はい、いきんで!」

「ンンンンン・・・・ン」

「はい、出たよ!」 オギャーオギャー

え、産まれた!見ると赤ちゃんがいる・・・。

まじまじと赤ちゃんを眺めた。

奏さんを見ると、赤ちゃんを見つめ固まっている、その目からは涙が流れていた

私が見ているのに気付いた奏さんは、ハッと我に返ったように私をみて

「ありがとう。小春、ありがとう・・」

涙も拭かず、ただ手をぎゅっと握って言った
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