拾い物は危険な新婚生活のはじまりでした
先程の男の人は、成瀬組というヤクザの若頭だったらしい。

私の心には、あの人の口角を上げた顔と心地の良い声が刻まれた。

カランカラン

ドアベルが鳴り、顔を上げると目の前にあの成瀬の若が立っていた。

あの日と同じ、真っ黒なスーツを着ている。

「花束を・・・5000円くらいで、お任せで」

私は、リシアンサス、ブルースター、デルフィニウムとグリーンを

使い、ブルーの涼し気な花束を作った。

「涼し気でいいな・・・。綺麗だ、ありがとう」

口角を上げ、あの心地よい声で私に言った。

それからは、毎週のように花束を買いに店を訪れるようになり、私もいつの日

からか、成瀬の若が来る日を楽しみにするようになっていた。

成瀬の若がお店に来るようになって半年がすぎるころ、いつものように花束を

買いにきた若さんから遠慮がちに声がかかった

「お前の名前を聞いてもいいか?」

「え、はい、立花 凛です。」

「凛か・・・俺は、隼人。成瀬隼人だ。良かったら今度から隼人と呼んで

 もらってもいいか?」

「は、隼人さんでいいですか?」

「あぁ、それでいい」

出来上がった花束を渡しながら「隼人さん、どうぞ・・・」

「ああ、いつもながら凛の作る花束は綺麗だな、また、よろしく頼むな」

そう言って帰っていった。
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