拾い物は危険な新婚生活のはじまりでした
その日から、私と隼人さんはお互いを名前で呼び合うようになった。

私には、隼人さんが成瀬の若だと知った日から、今まで気にも留めなかった

噂も聞こえるようになっていた。

成瀬組は、西のトップの組で隼人さんは将来、成瀬組の組長となる人だという

ことや、あの容姿や立場のため、言い寄る女の人が絶えずその噂も多いこと

私と隼人さんの関係は、花屋の店員とそのお店にくるお客様、それ以上の事

は、何もない。

私の中には、いつからか隼人さんに対してモヤモヤとした思いが膨らんで

いった。

仕事帰りのある日、私は繁華街の側を通ることがあった。

ふと見ると、そこに隼人さんがいた。隼人さんの隣には、仲良さげに腕を絡める

綺麗な女の人・・・胸がズキッと痛むのを感じた。

ああ、私は隼人さんの事が好きになっていたんだ。

好きだと自覚した瞬間に失恋だなんて・・・気がつくと、涙が頬を伝っていた

それからも、隼人さんは毎週お店にやってきて、花束を買っていった

私は隼人さんに対する想いを諦められないまま、隠して対応していた

隼人さんが、お店に来るようになってから一年になろうかという時、隼人さんが

綺麗な女の人とお店に入ってきた。今までは、いつも一人だったのに・・・

もしかして、この人が隼人さんの彼女なのだろうか・・・

だが、彼女だと思ったその人は、隼人さんの妹さんだった。

私の作った花束を「素敵!凄く気に入りました!」と喜んでくれていた。


< 69 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop