Sucre' amour
「ズルいんだよ！！」

その声とともに、バシンと乾いた音が響く。夢芽の頰に痛みが走り、夢芽は頰を叩かれたのだと気づいた。

夢芽は、二人に対して恐怖は感じている。しかし、言わなければならないことがあるのだ。

「フランシスさんの人生は、フランシスさんのものです。お二人が決めることではありません。フランシスさんが選ぶのはたった一人です」

フランシスと一生をともに生きられるのは、たった一人。だからこそ、みんなフランシスに見てほしくて必死に自分を磨き、フランシスにアピールする。夢芽だって、同じだ。

「私は、フランシスさんに恋をしています。だからこそ、特別な存在になりたい！」

まっすぐな目で、夢芽は二人を見つめる。二人はさらに苛立ったようで、「ふざけんな！」と言いながら夢芽に掴みかかろうとする。

また殴られる、と目を閉じた夢芽だったが、ふわりと優しい温もりに夢芽は包まれていた。

「僕の恋人に何か用ですか？」

フランシスが二人を睨みつけ、笑顔で言った。いつもの優しさはどこにもなく、怒りがそこにあった。
< 17 / 20 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop