ヴィーナスパニック

私はといえば……鎖骨辺りの黒髪セミロング。特に綺麗でもバサバサでもない、普通の髪質。
顔も……たぶん、普通。自己評価ではあるけれど、周りの反応や言動から中の中くらいのはず。何もかもが平凡だ。

自分の容姿をそれ以上振り返るのはやめた。虚しくなるだけだ。

そんな美人のさなちんだけど、とても気さくで人懐こい面もあって、最初に声を掛けてきてくれたのは彼女の方からだった。

人見知り気味な私には、それがどれだけ救いになったことか。


「神よ……感謝します」
「すみれ何やってんの。それよりさ、あの二人は何組になったのか気にならない?見に行こ!」


天に祈りを捧げる私の腕をさなちんはぐいぐいと引っ張り、掲示板の方へと引きずっていく。
こんなに細いのに馬鹿力である。

すでにそこには、ワーキャーと黄色い声を挙げる女子の群れがあった。

みんなが血眼で探す、人物。


「浅葱くんどこ!?」
「蒼馬く〜ん」
「白波瀬くんだって!」
「早く櫂くん見つけてよー!」


聞こえてくる、その人物達の名前。

ちなみに、四人いるのかと誤解しそうになるけれど二人である。



《浅葱 蒼馬》(あさぎ そうま)

《白波瀬 櫂》(しらはせ かい)



我が校の二大イケメンだ。

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