仁瀬くんは壊れてる
この話を誰かにすることになるとは、思わなかった。
「ひょっとして。省エネっていうのも」
「それは、わたしのこだわり」
「こだわり?」
「たとえば。イレギュラーに、ひどく弱いの」
「予定の変更が受け入れられなったり。モノの置き場所が変わるとパニックになるようなやつか」
「よく知ってるね」
「ちょっとな」
「今でこそ、切り替えられるようになったけど。小さな頃は癇癪を起こしてたみたい。お母さんの日記に、そんなことが書いてあった」
兄のことは、いいことしか書いていなかったのに。
わたしのことは――
“なんでみんなと同じことができないのか”
“私がちゃんと産んであげりなかったから?”
“こめんね。花”
母の苛立ちと悲しみが伝わってきた。
「感情の浮き沈みが苦手と。言ってたな」
「本当はね。嬉しくなったり、楽しいこと。嫌いじゃないの」
「わかるよ。見てて、わかる」
「だけど、それをキープしないと。自分でもコントロールできなくなる」
期待しないことでガッカリしないようにするとか。
他人との関わりをなくすことで安心していた。
好奇心も行動力もない。
お母さんのお腹に忘れてきたんだって。
それで、よかったのに。
意欲なんてなくても。
普通に生きられれば、満足だったのに。
「それじゃあ。仁瀬からの……なんつーか。猛烈なアプローチというか。アレは花に劇薬だったわけだ」
「そうだね。揺さぶられるのが、怖かったし。苦しかった」
「それでも。好きになったのって……なんで?」
「ひょっとして。省エネっていうのも」
「それは、わたしのこだわり」
「こだわり?」
「たとえば。イレギュラーに、ひどく弱いの」
「予定の変更が受け入れられなったり。モノの置き場所が変わるとパニックになるようなやつか」
「よく知ってるね」
「ちょっとな」
「今でこそ、切り替えられるようになったけど。小さな頃は癇癪を起こしてたみたい。お母さんの日記に、そんなことが書いてあった」
兄のことは、いいことしか書いていなかったのに。
わたしのことは――
“なんでみんなと同じことができないのか”
“私がちゃんと産んであげりなかったから?”
“こめんね。花”
母の苛立ちと悲しみが伝わってきた。
「感情の浮き沈みが苦手と。言ってたな」
「本当はね。嬉しくなったり、楽しいこと。嫌いじゃないの」
「わかるよ。見てて、わかる」
「だけど、それをキープしないと。自分でもコントロールできなくなる」
期待しないことでガッカリしないようにするとか。
他人との関わりをなくすことで安心していた。
好奇心も行動力もない。
お母さんのお腹に忘れてきたんだって。
それで、よかったのに。
意欲なんてなくても。
普通に生きられれば、満足だったのに。
「それじゃあ。仁瀬からの……なんつーか。猛烈なアプローチというか。アレは花に劇薬だったわけだ」
「そうだね。揺さぶられるのが、怖かったし。苦しかった」
「それでも。好きになったのって……なんで?」