仁瀬くんは壊れてる
 …………初恋、か。

「こじらせすぎだと思うけどな。花の前でもっと素直になってりゃ。花も、ここまで傷つかずに済んだのに」
「傷つけられて気づいたこともあるよ」

 巧くんが、すごく強がりなこと。
 素直になると脆いこと。

「……幸せそうなツラしやがって」
「えっ」
「俺も来世は。仁瀬くらい今どきなイケメンに生まれてーな」
「玲二くんは玲二くんがいいよ」

 目が合って。クスッと笑い合う。

「気持ちを伝えてしまえば。花と、もうこんな風に話せなくなるかもしれないと思った」
 …………!
「変わらず接してくれて。サンキューな」
「こっちの台詞。呆れないでいてくれてありがとう」
「言えることから。沙羅にも、色々また話してやって」
「うん」
「花のこと、大好きだから。自分から自分のこと話したらぜってぇ飛び跳ねて喜ぶぜ」

 そう言われて、そんなにわたしは自分の話をしてこなかったのだなと気づく。

「しかし、仁瀬のやつ。いきなり留学とはな。花のこと寂しがらせやがって」

 治療するところは、見せたくないと言われている。
 わたしは、どんな巧くんを見てもかまわないって言ったんだけど。

 頑張るからって。
 必ず戻ってくるって。

 そう約束して、離れた。

 会いには行けないけど手紙を書いて出した。
 届いたかな。
 読んで、くれたかな。

「寂しくないよ」
「甘えたくなったら。俺たち集めろ」
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