仁瀬くんは壊れてる
「そ……うかよ」

 あ、玲二くんが照れた。

 二人は。
 ……そういうこと。してるのかな?

 付き合いたてだし、さすがにまだかな。
 とか。

 こんな話、わたしが考えてどうする。

「花、トイレいこ」

 沙羅が、立ち上がる。

 いつも使わない、教室から離れたトイレにやってきた。ここは利用者が少ない。

「で?」
 …………え?

 沙羅の声のトーンが落ちる。

「いつから来ないの」
 …………!
「仁瀬くんが留学行ったのが、たしか夏休み入ってすぐって言ってたから。少なくとも三ヶ月くらいきてなくて。妊娠の心配してる感じ?」
 どうしてわかったんだろう。

 頭を縦に振ると、沙羅が神妙な顔つきになる。

「花。病院行こう。うちがついてく」
「行ったこと。親に、バレる?」
「病院名はバレるかもだけど。診察内容まではきっと簡単にはバレないんじゃないかな。してなかったら、生理不順の相談で通ったって言お」
「うん」
「市販の検査薬だと安く済む。まずはそれで確認してみてもいいと思う。もし、できてたら」
「……できてたら?」
「超音波検査してもらうの。子宮外妊娠とか。他にも病気のこととか。妊娠初期に受ける検査は、はやく受けたほうがいい。花の場合、すぐにでも」
「…………」
「花、しっかりしな。覚悟の上でヤったんでしょ」
「!」
「軽く考えて。したわけじゃないよね?」
「うん。軽くなんて。考えて、ないよ」
「だったらうちは、味方だよ。誰がなんといおうと」
「……っ」
「反対する人。厳しいことを言ってくる人は多いと思う。そんな人の意見より、自分の覚悟を信じればいいから」
「もしかして。お姉さん」
「高三でデキ婚。今、三人目妊娠中」
「すごい」
「うち、お姉ちゃん好きなんだ。常識にとらわれず生きてるとこ、カッコイイと思う」
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