仁瀬くんは壊れてる
 沙羅のお姉さんの家を出て、駅へ向かう。

「疲れたでしょ。留守番付き合わせてごめんね?」
「んーん。小さな子供と触れ合ったの初めてで。すごく貴重な体験ができた。それに。今日は、本当に。……本当にありがとう」
「できてたら。花も、お母さんだったんだよね」
 …………!
「花が今日感じたこと。花だけでとどめておかずに仁瀬くんとも共有してみたら?」
「……共有?」
「二人の問題でしょ」

 巧くんと、わたしの、問題。

「いつ帰ってくるの? 仁瀬くん」

 …………わからない。

「一年、とかかな」
 病気のことわたしなりに調べてみたいけど。
 調べるのが、怖い。

 元気になった巧くんと逢いたいなあって気持ちだけでなく。
 不安も、感じている。

「曖昧なんだね。一般的なのだと期間が明確だけど。仁瀬くんはそのあたり融通くのかな」
「かもしれない」
「ってことに。しててあげる」
 ――――!

 顔をあげると、沙羅が優しく微笑んでくれている。

「話せるときがきたら。話して」
「…………うん」
「レイジにも」
「うん」
「はやく逢えるといいね」
「っ、うん」
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