仁瀬くんは壊れてる
#01 興味ない
#01


「みてみて、花。仁瀬くん、体操着だ!」

 目をハートマークにして校内イチのモテ男子を見つめているのは、クラスメイトの沙羅(さら)。

「ほんとだね」

 仁瀬 巧(たくみ)
 特進クラスの同級生

 つまり、秀才。

 そのうえスポーツ万能で。
 甘いマスクなものだから、人気がある。

「やばいー!」
「なにが?」

 ジャージくらい着るさ。
 体育の授業、受けるなら。

「仁瀬くんの周りの酸素になりたい。そして仁頼くんの体内をめぐりたい」

 ……沙羅の頭の方がヤバいな?

 この学園の女子は仁頼くんのトリコだ。

 というか。
 他校の生徒も心を奪われているらしい。

 駅のホームや車内で視線を独占し。
 ラブレターを渡される現場をたびたび目撃されているとかなんとか。

 そういう情報は、この一ヶ月、沙羅から散々聞かされてきた。
 別に知りたくないのだが。

「本命、いないらしいんだよね」

 次は音楽か。
 向かうは特別棟、三階。
 うむ。このまま一般棟一階の渡り廊下で足を止めていては間に合わない。

「先に行ってる」
「え、待って〜!」

 沙羅が追いかけてきて、ため息をついた。

「花って、なんで仁瀬くんに興味ないの?」
「……え?」
「フツウあれだけ顔がいいと、ほっとけないと思うんだけど」
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