仁瀬くんは壊れてる
 伸ばしっぱなしの髪も。
 規定通りに着こなした制服も。
 メイクもネイルも未経験なのも。

 垢抜けていないとは思うけれど。

「変わらなくていい」

 変化は、キライだ。

「花は、ナチュラルに可愛いけどさ。わたしの腕で。美少女に変身させたい!」
「却下」

 沙羅から登校前のヘアメイクに一時間かけていると聞いたときは、度肝を抜かれた。
 彼女のメイクポーチには見たことがない道具がたくさん詰め込まれている。

 真逆なタイプの沙羅とわたしが一緒にいる理由は、単純に席が近くなったのがきっかけだった。

 楠田 沙羅(くすだ さら)
 小糸井 花(こいとい はな)
 
 沙羅が前で、わたしがうしろ。
 振り返って話しかけてくる沙羅の会話を聞き流したり相づち打ったりしているうちにこの通り。

 唯一の共通点は互いに帰宅部ということ。

 沙羅は、趣味の時間が欲しいから。
 わたしは省エネに生きたいから。
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