仁瀬くんは壊れてる
「いよいよかな〜」

 ニヤけ顔で沙羅がわたしを見つめてくる。

「……なにが?」
「ふふっ。ふふふふ」

 実に意味深である。
 ツッコミを入れるのが面倒なのでスルーした。

「なんか今日、残れる人少ないね」

 見渡すと教室に残って作業をしているのは、わたしを含めて五人だった。

「みんな部活とか塾あるからなあ。そしてうち、バイトなんだ。ごめん〜!」

 既に帰り支度を終えている、沙羅。

「なに言ってるの。沙羅はいつも三人分は頑張ってくれてるでしょ」
「花も。毎日ご苦労さまです。省エネなのに、よく頑張ってるよホント」
「たいして動いてないけどね」
「花は、頭脳派だよね。お金の管理は花に任せたら安心だし。そうそう。考えてくれたデザイン、よかった!」
「ほんとに?」

 メニューのレイアウト。
 自分なりに、どうすれば見栄えがいいか悩んだからそう言ってもらえると嬉しい。

「もちろん採用で!……って、やば。次の電車乗り遅れたら遅刻だ」
「頑張ってね」

 学校に遅くまで残れない子も、たとえば買い出しを担当するとか、衣装の一部を家のミシンで塗ってきてくれるなど、仕事を分担している。
 毎日コツコツ、見えるところでも見えないところでも協力し合い、どんどん完成に近づいていく。
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