仁瀬くんは壊れてる
 昼休み。
 サンドイッチを食べるわたしの机にポンと雑誌を置いてきた、沙羅。

 女子高生向けのファッション雑誌のようだ。

「たとえばさー、花は。こういうのが似合うと思う」

 なになに。
 雑誌に視線を落とすと、フリルやリボンのついたワンピースを着ているモデルがいた。

「無理だよこんなの」
「ぜったい似合うよー!」
「そもそもにスカートとか。履かないし」
「履いてるじゃん」
「制服は、やむを得ずだよ」
「スカート持ってないの?」
「うん」
「一着も!?」
「うん」
「勿体無い!!」

 どうして制服って男子がパンツで女子がスカートなんだろう。

「足、キレイなのに〜」
「普通でしょ」
「花って肉付きいいよね」
「デブって言った?」
「ちがうちがう。ズバリ男子の好きそうな体型だなーって思って」
「好かれたくない」
「何カップ?」
「…………」
「うちの予想ではDくらいかなって」

 ピタリとあててきやがった。

「なに食べたらそんな育つの? 羨ましい」

 特に食事にはこだわってこなかった。
 偏食だし、食欲より睡眠欲が勝つ。

「たぶん、遺伝」
「うちはこの通り、まな板だし。モデル体型目指してダイエットしてるけどさ。花は、グラビアアイドルになれそうだよね」

 グラビアアイドル?
 水着とか着てるような?

「ないない」
「試しにオーディション受けてみたら」
「わたしのそういう写真見て誰が喜ぶの」
「うちが」
「……書類で落ちるよ」
「えー、花は自分を過小評価しすぎ」
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