仁瀬くんは壊れてる
 自信がないとかそういう問題でなく、根本的に人とズレているのだ。
 価値観の違いというやつだろうか。

 可愛く見られたいとか、カッコいい彼氏が欲しいと思うことが面倒くさい。

「色、白いよね〜。肌もキレイだし。日焼け止めとか化粧水なにつかってるの?」
「まったくなにも。水で洗って終わり」
「嘘でしょ!?」

 学校でもなきゃ一歩も外に出ない。
 よって、ファッションにこだわる必要もない。

 お年玉やお小遣いは基本的に貯金している。
 そうだな、読みたい本が図書館になければ買うくらいだろうか。

「うち、男子だったら花をカノジョにしたい」
「えー……」
「それで、うち好みに着飾るの」

 わたしは着せ替え人形か。

「却下」
「花の喜ぶデートプラン考えるよ」
「外に出たくない」
「なら、おうちデートする!」
「おうちデートって……なに」

 興味はないが一応聞いておこう。

「そうだなー。映画見たり?」
「映画は一人で見たい」
「いやいや。恋愛モノ見て気持ちを高めるもよし。ホラー見て『こわいよ〜』って抱きつくもよし」
「……それから?」
「徐々に二人の距離感は近づくの。手と手を重ね。見つめ合って。口づけを――」
「そういうの無理だ」
「なんで〜!?」
「他人に触れたいと思わない」
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