仁瀬くんは壊れてる
「おはよ、花」
「…………」
「はーなー」
「…………」
「生きてる?」
「っ、つめた!」

 ペットボトルを頬にあてられる。

「おーはよ」
「…………おはよう」

 あんなに合わす顔ないって思ってたのに。

「今日を乗り切れば休みだ!」

 沙羅の笑顔に癒されている。

 胸は、ズキズキと痛むのに――
「そうだね」
 この子との縁を、切りたくない。

 仲良くする資格ない。
 仲良くすると迷惑をかける。

「明日がまだあるだろ」
 …………!
「えー、明日は午前だけで。掃除くらいでしょ、レイジ」

 玲二くんが会話に入ってきたけれど。
 顔が、見られない。

 いつもどおりの朝のようで。
 重く、色をなくしたような朝。
 
「花」
 ――――!
「はよ」

 玲二くんは、

「……おはよう」

 いつもと変わらなかった。

 玲二くんだけじゃない。
 沙羅も。

「昨日は、その。悪かったな」
「わたしも。ごめんなさい」
「花は悪くない」
「ううん。わたしが約束破ったから――」
「冷たくしちまったのは。花に怒ったからじゃないから」
 …………え?

「ダセえよな。マジ。……かっこわりい」
 手で顔を抑える玲二くんに、
「ドンマイ」
 噂を聞いていくらか事情を知っているのか、それともなにも知らいのかはわからないけれど、沙羅が、深くはツッコまずに玲二くんを励ました。
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