仁瀬くんは壊れてる


 ――翌日


 昨日、車を呼んで病院にやってきた。

 巧くんはそのまま入院することになって、わたしも病院に泊まった。

 検査に向ったタイミングで、コンビニへ向かおうとしたら――……

「驚いた。巧が、ここに誰か連れてくるなんて」

 白衣の男性に声をかけられた。
 名札には“仁瀬馨”と書かれている。

 もしかして。巧くんの、お兄さん?

「ごはん。今から?」
「……はい」
「よかったら一緒にどう」

 お兄さんと、カフェに入る。

「自分で、払います」
「いいんだ。付き添ってもらってるんだし。疲れたろう?」

 わたしのサンドイッチとドリンク代を、スマートに支払う馨(かおる)さん。

 巧くんのお父さんだけでなく、お兄さんも、この病院のお医者さんだったんだ。

 わたしは、巧くんのことをなにも知らない。
 巧くんのファンの方が、きっと、そういうことには詳しいだろう。

「同級生?」
「はい」

 こんなこと言っちゃなんだけど。
 あんまり巧くんと顔が――
「似てないだろ、巧と俺」
 ……心の声が漏れてしまったらしい。
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