仁瀬くんは壊れてる
「母親が違うんだ」
 異母兄弟、というやつだ。

「巧は、後妻の子」
「そうなんですね」
「クラスメイト?」
「いえ、わたしは一般クラス……です」
「彼女?」
「……ちがうと、思います」

 恋人みたいなこと、したけど。
 付き合おうって言われたわけじゃない。

「大切な子ってことはわかった」
「……そうなんですか?」
「巧は、病気のこと限られた人間にしか話してないんだ。それも病院関係者と。学校でも一部の教師にしか伝えていないはずだ」
「話してくれた、というよりは。なりゆきで知ってしまったと言いますか」

 すると、お兄さんは穏やかに笑った。

「きっかけはなんであろうと。君のことは信用しているんだろうね」

 顔は全然ちがうのに、笑い方が少しだけ巧くんに似ているなと思う。

「巧が高校にあがるまでは二人で暮らしてた。俺が結婚して家を出たあと。巧は、実家に帰らずそのままそこで暮らしてる」
「あのマンション。お兄さんと暮らしてた家なんですね」

 謎が解けた。
 一人暮らしにしては広いなって思ってたから。

「暮らしてたって言っても。俺は、あまり家に帰れない生活を送ってた。巧は一人でなんでもできるヤツだからって、安心しきって。……巧の病気が発覚するまでは」

 ズシン、と。心に重くなにかがのしかかる。

「巧くんは。入院が必要なんですか?」
「いいや。治療をきちんと続ければ、家で過ごしていて問題ない。高校生活も送ることができる。ただ、怪我したり、激しい運動は制限させられてるけど。ちゃんと守ってるかどうか」

 ――わたし、巧くんの唇、噛んだ。

「血を流すと大変なんですか……?」
「というよりは。巧の場合、感染症に人よりかかりやすいという意味合いで怪我に注意が必要だ」

 言ってくれればいいのに。
 カラダのこと。

 放課後に残ったりするのも本当は体力使ってたんじゃないの?
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