仁瀬くんは壊れてる
 放課後の図書室は、快適だ。
 たいていの生徒は部活に行くか帰宅しているせいで、ガラ空き状態。

 課題や受験勉強らしきことをしている人が少人数いるくらい。

 今日は本の整理を言い渡された。

 委員会なんて面倒なことやりたくないが、前期か後期のどちらかに一度はやっておかなきゃいけないので、他の委員よりは自分に向いていそうな図書委員を選んだ。

「小糸井さん、こっちの本棚よろしく」

 同じクラスのもう一人の図書委員、芳田(よしだ)くんに言われる。
 眼鏡をかけた黒髪男子。
 人は見た目で判断できないが、芳田くんは真面目そうで話しやすい雰囲気がある。

「了解」
「あ、でも」
「?」
「高いところは、俺やるから」
 …………?
「別に。できるけど。脚立持ってくるし」

 芳田くんだって一番上は脚立あったほうが効率よく整頓できるんじゃない?

「いや、そういう問題では」
「どういう問題?」

 見上げると、芳田くんが目をそらしたあと
「……スカート」
 ボソッとつぶやいた。

「あー、それなら大丈夫。見えても平気だから」

 中にスパッツ履いてるし。

「いや、そういう問題でもない」
「……?」
「とにかく。高いところは自分がやるから」
「そっか。わかった」
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