vrafara









「あー!寄り道したらダメなんだよぉ!」








それは
今から8年前

全ての建物が見上げるくらい大きく見えて
郵便ポストでさえ背伸びしなきゃ
届かなくて。


当時のあたしは
小学2年生に上がったばかりで。

真新しく小さな体には大きく見えた
ランドセルもようやく様になってきていた












「うるさいなー!寄り道じゃないし!
俺はこっちから帰るんだから!」


「もー!先生にいうからね!
怒られるんだからねっ!」


「寄り道じゃないって言ってるだろ!」












懐かしいなあ
まだあの頃は当たり前に手を繋いで
通ってたんだっけ。





…まぁ、塔矢があっちこち行かないように
リード握ってるようなものだったけど。






当時の塔矢は
やんちゃで好奇心旺盛で

「ダメ」って言われたら
余計にやるような

典型的な悪ガキで。










「じゃあ、お前には捨てられてる子犬、
超小さくてかわいいのに
見せてやらねーからな!」


「えっ子犬!?」

「…黙ってるなら連れて行ってやるけど…」

「でも…寄り道はダメって…」

「じゃあ、教えてやらなーい!」

「そんなあ…」











それに対しあたしは
とりあえず優等生で。

塔矢のお母さんから
「塔矢をお願いね」って言われてるから
絶対ちゃんとつれて帰らなきゃって
使命感に燃えてる子供で。










「内緒だからな!」


「う、うん!」









あたしは毎回、
そんな塔矢に振り回されては


次の日
先生にばれては
一緒に怒られるとこまで
いつも付き合わされて。








ごく当たり前の
ごく普通の

平々凡々な日常

当たり前に月日は流れて
当たり前に毎日が過ぎていく




それを
誰もが疑いもしなかった
あたしも、親も

もちろん塔矢も















夏休み直前の終業式










「うるせー、由良の説教ババー!」


「もー!遊びに行くなら、一回帰ってからじゃなきゃダメって先生言ってたもん!」











帰り道
いつもみたいに
寄り道して歩く塔矢に怒って














「もう、あたし知らない!後で怒られるからね!」


「帰れ帰れー!由良はいちいち細かいんだよ!」











ふくれっ面で
塔矢と別れて。


























次に目を覚ました時には
あたしは病院のベッドの上にいた













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