vrafara



あの時の記憶が
戻った訳じゃない

それでも
頭じゃないどこか…

あたしの体が何かを覚えてる


それを自覚したのは
あの日から5年くらい経過してからだった。












中学1年


今もそうなんだろうけど
思春期真っ只中

ただのうるさいガキにしか見えなかった
同級生が

思ってた以上に
男の子に見えたり

たった二つしか離れてない
3年生がすごく大人に見えたり。










「由良、由良!松木先輩!」

「ほんとだ!」






例に漏れず
二つ上のバスケ部の先輩

あたしはその先輩見たさに
あかりはお目当ての先輩見たさに
毎日、2人で放課後は
体育館のギャラリーにこっそりと顔を出してた。



今、高校生の立場から思えば
中3なんてほんと子供にしか見えないのに




その当時は
先輩が何をしてても
何もしてなくても

全部がかっこよく見えてた。





「もー!やっぱりバスケ部のマネージャーやればよかったよねー」






まぁ…思春期マジックよね
今思えばだけど。








「由良、告らないの?」

「えー!?無理無理ー!?先輩人気だもん!」

「でももうすぐ引退だから
こんな風にみれなくなるよー?」

「うーん…」






見てるだけで
ドキドキして

話しかける勇気も度胸も
あたしにはなくて。

あたしは周りでキャーキャー
言ってるほかの女の子よりも
先輩の目には入ってなく。




それが告るなんて

全くと言っていいほど
頭にはなくて。



「告る」
その先のことなんて
ほんと想像もつかないくらいだった。








「告るにしても、名前も知らない子に言われても振られるのが目に見えてるよー…」






自分だって
知らない男子に話しかけられたら
え?誰?ってなるもん…


先輩にしたら、今のあたしは
そういう状況だろうし。


…無理だとわかってても
振られるの確定で告る勇気は皆無。







「じゃあ、知り合いになればいいじゃん!」






深くため息ついて
うなだれるあたしの肩をバンバン叩くあかり。

知り合いになんて
何を簡単に…


怪訝に見上げるあかりが
指差したのは…











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