vrafara
「ほらほらチャンスチャンス!」
「ちょっあかり、待ってってば!」
まるで名案とでも言いたげに
目をキラキラさせて
ハイテンションであたしの背中をあかりが押す
そんなあたしの目の前には
「あ?………何」
部活の休憩をいいことに
体育館裏に無理やり引っ張り出されて
超不機嫌な顔で見下ろす…
塔矢。
「えと…あの…」
「…だから何」
うわあ…
顔に迷惑って書いてあるかのくらい
不機嫌だよー!
絶対、うぜぇとか
思ってるよ、これ
もー!あかりのバカー!
「用ねーんなら俺行くぞ
次のゲームの準備しなきゃいけねーんだよ」
「もー!由良早くー!
山石くんしかバスケ部の子で知り合いいないんだからほらっ」
「いや、あかりってば」
小学校からバスケ始めた塔矢
普段から大会で全国目指してるうちのバスケ部
何だかんだ言っても
経験者は即戦力で。
1年の塔矢はレギュラーにはなれずとも
経験とそこそこの身長で
試合にはちょくちょく出されていて。
先輩たちとも
よくかたまって話してるのを
あかりも知ってた。
でも
すでにこの頃には
家が隣のあたしでも
塔矢と話すことなんて
登下校時に一言二言程度だった。
そんなんなのに
先輩と仲良くなりたいんだけど!
なんて…
周りでキャーキャー騒ぐ女の子に
うるさいって
しかめっ面しかしない塔矢からしたら
刻まれた眉間にさらに深くシワが増えるだけとしか
思えないのにな…
「早くー!」
…もー…
仕方ないなあ…
深く吐き出すように
ため息ついて
「あ、あの…ね?」
ダメ元だ!
そう思って口を開こうとした時
「おーい、山石ー!ゲームはじまんぞー」
テーピングを巻き直しながら
ひょいと顔を出したのは
「ん?あれ?よく練習見に来てる子じゃん
塔矢のクラスメイトかー」
憧れの人、松木先輩
その人だった。