vrafara
あの一件から。
「あ、こないだの子だ!こんちわ!」
「あっ、えっ、こんにちは…!」
すれ違う廊下、
見下ろしてた校庭、
部活の休憩時間
松木先輩は
あたしたちを見かける度に
一言二言、声をかけてくれるようになった。
声掛けられる度に
真っ赤になるあたしを見ては
毎回笑ってたから
面白がっていたみたいだけど。
「こんなかわいいのに彼氏いないんかー」
「またからかって…!」
まぁ…ついこないだまで
ランドセル背負ってたお子様なんて
いろんな意味で対象外で
おもちゃ以外、何でもないだろうけど。
遠くからしか見えなかったから
距離が近くなると見えなかったものが
やっぱり見えてくる。
先輩は見た目と人懐く軽めな性格で
やっぱりいろんな人に人気で。
すれ違いざまに
いろんな女の子がチラチラ横目で
みてきたりで。
「…何あの子、似合ってなーい」
なんて…
通りすがりにボソっと言われることも
少なくなかった。
…そんなこと
わかってるけど
それでも
「えと…由良ちゃん?だっけ?
塔矢んちのお隣さんなんだって?」
「はっ…はいっ」
「ぶはっ、なんでそんな緊張すんのwww」
たいした話じゃなくても
先輩の声に
笑顔に
ドキドキして
嬉しかった
「そだ、今度夏祭りあるしょ?
部の連中で行くんだけど行く?
もう一人の子も一緒に」
「えっ!!」
「男ばっかだしむさ苦しいから
嫌かあ…嫌ならいいけど…」
「い、嫌なはずないっ!!…です…」
「ぶはっ、即答かよwww」
「…笑いすぎです!」
…ちょっと前まで
こんなの想像もできなかったな…
塔矢のおかげっていうのかな…
…まぁ、塔矢には
キャーキャー言ってるあたしは
まるで虫ケラを見るかの目で見られてるけども。
でも
すれ違っても
目にも止まらなくて
ついこの前まで
ただの名前さえ知られない1年生だったのに
「んじゃ、今度の土曜にね!」
「はっはいっ!」
塔矢の知り合いだからなんだろうなって
わかっていても
嬉しかった。