強すぎる彼女と優しすぎる彼
「この前、体調が悪かった時に病院に行って分かったの。私ね、赤ちゃん産めないかもしれない。龍仁の手に赤ちゃんを抱かせてあげられないかもしれない。」
佳子はぎこちなく笑う。その瞳からは涙が伝った。

「ごめんね。龍仁をパパにしてあげられないかもしれ」
そこまで佳子が言ったところで龍仁が佳子を抱き寄せた。

「ごめんね。私の体ポンコツらしい。ごめ」
「何も言うな。もう何も言うな。」
龍仁の言葉に佳子はこらえていたものが一気にあふれ出した。

それでも自分が泣いたらいけない気がして声を押し殺して静かに涙を流した。

しばらく二人は抱きしめあったまま何も話さずただ時がけが流れた。
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