強すぎる彼女と優しすぎる彼
「体のことだけじゃない。佳子の心が俺は心配なんだよ。」
「・・・」
不妊治療は精神的にも肉体的にも確かにしんどかった。それでも体調が悪い時は龍仁に言う佳子も、自分自身の気持ちが不安定になりそうになるとつらい思いを龍仁に悟られないようにすることが多かった。
龍仁にはそんなこと初めからお見通しだった。ただ気づかないふりをしながらそっと励ますように出かけようと誘ったり、おいしいものを買って帰ったりと気遣ってくれていた。佳子にも龍仁のそんな気遣いが分かっている。
「頑張りすぎる性格ってはわかってるけどさ、見ていられない。」
「・・・」
「そこに意味を見出そうって思った。でも、今二人でいて幸せなんだ。そんな今しか俺には見えない。今がよければいいっていうわけじゃないんだ。この先も二人でいれば幸せだって確信してる。」
「・・・」
「前に佳子が救急車で運ばれたとき、そのまま佳子を失うかもしれないと思ったら後悔した。」
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