強すぎる彼女と優しすぎる彼

「うん」
龍仁は佳子の涙をぬぐい、そっとビールを差し出した。
そのビールを佳子はぐいっと飲む。
妊活を始めてからずっとやめていたお酒を口にして佳子は本当に終わりなのだと実感した。
「おいしい」
「うん」
「おいしいよ」
「うん」
龍仁は佳子の涙をまたぬぐう。
「ほら、これも食べて」
と佳子が好きだったものを口に運ぶ。

自分の肩にいつの間にか入っていた力が抜けるのを佳子は感じた。