強すぎる彼女と優しすぎる彼

「はぁ・・・」
「はぁ・・・」
お互いに深いため息をつきながら佳子と桃はいつものようにランチを食べていた。
「どうしたの？」
桃の言葉に佳子は困ったように
「実はプロポーズされたの。」
と打ち明けた。

「結構前にね」
「よかったじゃない！」
「…う～ん。」
佳子の表情が曇る。
「実はね、龍仁に転勤の話が出ててね。北海道。」
「……そっか。」
「30歳。自分の人生の選択が多すぎるよね。仕事もここまでがんばってふんばって、地位も大切だけど結婚して子供がほしい。」
桃も自分のおかれている状況に近い話に他人事とは思えない。むしろ自分の悩みとリンクして心が痛んだ。
「悩んでる場合じゃないのはわかってるけど、年の数だけ失敗もしてきたからさぁ。選択しちゃうことが怖いんだよね。」
「わかる。すごく。」
『はぁ～』
佳子と桃は同時にため息をついた。

プロポーズからもうすぐ二週間が経とうとしていた。

龍仁はすでに仕事の引継ぎに入っている。あと三か月もすれば北海道に完全に転勤になる。