強すぎる彼女と優しすぎる彼
『うそつきだな。お前。』
めずらしく龍仁の声が低くなる。
「ごめん」
『佳子。今すぐ家に帰れ。危ないからタクシーで帰るんだぞ?帰ったら電話して。心配だから。』
「わかった」
佳子は電話を切ると帰り支度を始めた。

龍仁がいない寂しさはやっぱり仕事なんかじゃうめられない。
そんなことはわかっていた。でも自分にはこうすることしかできない。

龍仁は離れている間の佳子が心配で仕方なかった。
その心配が的中しようとしている。

きっと佳子は仕事にはしっている。自分を追い詰めるように。

そうしているのは自分だとわかっている。でも、この距離ではなにもしてあげられないのがもどかしい。

もしも佳子が自分のプロポーズを断ったら・・・こんな生活を送るのは佳子にとっても自分にとってもよくないと痛感した。
< 24 / 198 >

この作品をシェア

pagetop