強すぎる彼女と優しすぎる彼
「佳子」
龍仁は佳子をあいている会議室へ呼ぶと椅子に座らせた。
「大丈夫じゃないのはわかっている。でも最後の大切なプレゼンだ」
震える自分の手を見つめている佳子の手を龍仁は包み込む。
「桜木さんも佳子のこと応援してくれてるんじゃないか?」
「・・・。」
「佳子」
龍仁の呼びかけにも佳子は自分の手を見ている。

「できない。むりだよ」
そんな言葉を佳子から聞くのは初めてだった。どんな時でも堂々としていて、どんなトラブルにも打ち勝つ強さを持っている佳子からは想像できない姿だった。
がたがたと全身を震わせて弱気になっている。
龍仁は少し考えてから
「わかった。俺が代わりに出る。今の高岡には任せられない。」
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