強すぎる彼女と優しすぎる彼
「大学を卒業して私は入社しました。何が正しくて、何が間違いかもわからないままただがむしゃらに仕事をして、主任という立場までいただきました。今の地位や、こうしてプレゼンに参加させていただけるのはお恥ずかしながら自分の力が大きいのだと錯覚していたんです。」
佳子が予定していたプレゼンの原稿の最終ページを見ながら話をする。
そこには同じチームの仲間からの叱咤激励のメッセージが書かれていた。
「でもそれは大きな間違いでした。今の私がいるのは先輩方や後輩、上司や部下。同期。チームの仲間。会社という組織のたくさんの人がいたからです。その方たちに感謝をすることを私は今までしてきませんでした。とても恥ずかしいことだと思います。」
プレゼンの選考員たちは佳子の話をまっすぐに聞いてくれている。
「今回の企画は企業と地域の皆さんがつながり、よりお互いが見える構造であることにこだわりました。まずはお互いの存在を知ることから始めたい。そしてお互いを尊重しあい、助け合えるようなそんな社会につなげたい。テーマは壮大すぎるかもしれませんがそのきっかけになればいいなと考えています。」
< 66 / 198 >

この作品をシェア

pagetop