強すぎる彼女と優しすぎる彼
「私、龍仁が北海道に転勤になるっている話を本人より先にほかの人から聞いたんです。」
「・・・。」
司が佳子の方を見る。
「そのことを龍仁は謝ってくれました。でも、私の気持ちはまだ龍仁には、言ってないんです。」
「気持ち?」
「龍仁は私が大切だから言えなかったって言いました。大切だから臆病になったって。」
佳子はまっすぐに司を見る。
「そんなの私だって同じです。大切だから知りたかったし、大切だからこそちゃんと言葉にしてくれなかったことが寂しかったんです。私は龍仁の表面だけを好きになったわけじゃありません。心許して、龍仁の全部を好きなんです。だからまとまらない考えでも、自分中心の未来でも、なんだっていいから話してほしかった。そのまとまらないかっこ悪い話でも、聞きたかった。一緒に考えたかった。」
「・・・。」
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