強すぎる彼女と優しすぎる彼
「だって大好きな人が自分のことを考えて悩んでるんですよ?そんなの聞きたいじゃないですか。一緒に考えたいじゃないですか。一緒に背負いたいじゃないですか。分けてもらえないなんてつらすぎる。」
佳子の目から涙が流れた。
「桃も同じだと思います。かっこ悪い紺野課長の言葉でもなんでもいいから、桃は待ってたんだと思います。でもくれないから」
「俺の背中、押してくれたんだな」
司は佳子の言葉に続けた。
「こんなにちっさい手で。ほっそい体で。ありったけの力で俺の背中をひっぱたいてくれてるんだよな。」
司は桃の頬を撫でながら
「ありがとな。話し、きけて良かった」
と佳子に告げた。

桃のカバンを首から下げて桃をおんぶして司は居酒屋を後にした。

もしかしたらこうして桃のぬくもりに触れるのが最後かもしれないと思いながら。
< 73 / 198 >

この作品をシェア

pagetop